商品説明
発行:2019年1月10日
本書の特徴と狙い
◆ EVの関連情報とデータをベースにEV ワールドを徹底分析
◇ EVワールド(米、中、韓、欧、日)の勝組と負組は? 勝敗はあるのか?
◇ 米国ZEV、中国NEVと欧州、その中で日本の役割は? 韓国の思惑は?
◇ Co、Li、Niの元素資源、その供給とコスト高騰、実態は?
◇ 三元系NMC 正極材、性能とコストバランス、何処に収束するか?
◇ 髙容量負極材の進展、実用レベル、採用状況と正・負極材のバランスは?
◇ 電池(セル)製造の実績(GWh)、計画動向と多様化vs.集約化は?
◇ 2018年レベルのEVの走行距離・電池容量・コストと中長期目標!
◇ 元素資源→正・負極材→電池→EV・PHV・・・材料から製品への流れの一貫性と凸凹隘路は?
◇ 全固体電池へのパラダイムシフト、TOYOTAの2050年に期待!
発刊にあたって
これまで筆者はCMCリサーチと共に「リチウムイオン電池の製造プロセス&コスト総合技術 2016」、「ZEV規制とEV電池テクノロジー」(2017年発行)、「全固体リチウムイオン電池の展望」(2018年発行)などの調査レポートを企画し、調査・執筆してきた。これらのレポートは、いずれも技術的な内容が主題であり、EVそのものの数量的な需要動向や、その基礎となる電池生産や企業動向については副次的であった。
2018年現在において、この一年間のEV関連を取りまく状況は目まぐるしく、そしてかなり着実に進展してきていると感じられる。自動車は、その技術だけではなく、都市、国家、地球の環境問題、エネルギー経済、さらには政治とも密接な関係があることは言うまでもない。その中で今後のEVとPHVが、仮に2030年をターゲットとして考えると、現在より一桁大きい1,000万台/年レベルの生産量が望まれ、それ以下では存在意義は薄れかねない状況にある。これを実現させるためには、原材料>電池>EV、PHVという流れの中で、それらを数字的に定量的に捉えて考える必要があろう。
EVへの全面シフトには、技術的に、原材料・資源的に、また総合的なコスト的に、種々の矛盾やアンバランスが存在する。数年後に振り返って見て、“あれはEVバブルだった”、とならないために、また日本の技術がその実現を可能にするために、情報とデータを集めて、それを踏まえた理詰めの検討が求められている。
本レポートが、“EVワールド(米、中、韓、欧、日)”と題して、諸外国の動向を横断的に取り上げたのは、もはやグローバルな対応なしには、EVの拡大はあり得ないと状況を把握しているためである。統計情報も乏しく、正確な数値情報の把握が困難な中ではあるが、各国の企業の動きを時系列で一覧する中で中長期の動きを考察した。
元素資源のコバルトとリチウムの鉱産から正極材を経て電池へ、そして最終的にEVに至るまでは、異業種の連続であり、その接点も複雑である。原材料から電池までの化学量論的な流れの把握と、業界ごとの規模の格差もあり、かなり仮定を置いた試算とはなっているが、今後の状況の変化に合わせ、再計算の余地を残してまとめた。元素資源からEVまで、範囲を拡げたことで判り難い点も多々あるかもしれないが、現時点でのEV関連情報の総覧として、関係する業界の方々の参考になれば幸いである。
調査・執筆:菅原秀一/企画・編集:シーエムシー・リサーチ
本書の構成
第1章 正・負極材の基礎特性、電池への適応と研究開発の経緯
第2章 正・負極材の開発と諸問題(1)元素資源のルートと確保
第3章 正・負極材の開発と諸問題(2)実生産の規模と計画
第4章 電池(セル、パック)の生産と諸問題(1)生産状況と動向
第5章 電池(セル、パック)の生産と諸問題(2)コストダウン
第6章 EVとPHV、2017年生産実績~2030年の予測
第7章 EV、PHVとエネルギー諸問題の整合性
第8章 電池(セル)と原材料、部材の算定基礎 ~2017
第9章 (参考資料) ZEV(米国)、NEV(中国)、CO2(欧州)、CO2(日本)とCAFÉ
第10章 (終章)EVの東西・南北とパラダイムシフト、液電解質系から全固体電池へ
内容紹介
第1章 正・負極材の基礎特性、電池への適応と研究開発の経緯
正・負極材の物理・化学の変遷と電極板とセル製造への諸問題を扱う。最近、正負極材は充放電特性の向上のみならす、合成方法の変化に伴って粒子形態(モルフォロジ-)が変わって来ている。この問題を解決しないと、ラボで優秀な特性の正負極材も実用にはならない。またリチウムイオン電池(セル)の電気化学や理論容量も説明に加えた。
第2章 正・負極材の開発と諸問題(1)元素資源のルートと確保
元素資源(Co、Ni、Li)と正負極材の技術事項と共に、世界的な資源確保や市場の競争状態を数字で一覧できる様にまとめた。“元素資源”のメインは稀少元素のCoと資源が限定されているLiである。金属精錬と金属地金の相場と、正極材の化学原料としての前駆体、Co硫酸塩とNi硫酸塩では、量的スケールや化学純度が大きく異なる。これらを踏まえて元素資源の所要量をEV(万台)、電池(GWh)との対比で試算した。EV生産が大きくなると、生産全体の時間的な、空間的な整合性が懸念される。ここではEV100万台から1000万台のモデルに考察した。
第3章 正・負極材の開発と諸問題(2)実生産規模と計画
リチウムイオン電池(セル)の創生以来、正極材の容量性能アップとコストダウンは常に開発のターゲットであった。小型の民生用途はコバルト酸リチウムLCOも可能であるが、EV用途は過酷な使用環境、安全性、コストの面から、LCOに替わる正極材が求められている。
NMCxyz三元系でコバルト比率を下げてどこまで容量とサイクル特性を維持できるかは、資源確保と国家間の競合まで巻き込んだ状況である。中韓欧日の多くのメーカーが正負極材の生産計画をアナウンスしているが、ここでは公表数字を一覧し、各社の計画を時系列で示し今後の動向を考察する。
第4章 電池(セル、パック)の生産と諸問題(1)生産状況と動向
EVの生産台数に応じた、リチウムイオン電池(セル、パック)の生産ができるのか。公的統計が整備されている日本以外は、正確な数字情報の把握は極めて難しい。GWh単位の数値を時系列で国や企業別に整理して、正極材とEVの間をつなぐ電池の問題を考察した。
特に中国の生産状況と、米国のTESLAモーター社への供給状況は、虚実・混沌とした感もあり、技術やコストの議論以前の問題が多い。一方の欧州有力自動車メーカーの電池調達の動向も、前進と後退が合い混じったアクションがみられ、そこに韓国のメーカーが入り込む構図になっている。
第5章 電池(セル、パック)の生産と諸問題(2)コストダウン
EV普及の最大のネックは電池のコストであるこ。最近、元素資源のCoのコストがクローズアップされているのは。LFPやLMOではEVの走行距離~600kmが確保できないことが共通認識となり、Coを含むNMC多元系正極材のコストダウンが、強く求められている。コスト問題は原料だけではなく、他の部材や製造工程費、工場の稼働率、不良品率など、多くの課題を抱えたままである。総合的なコストダウン=合理性の追求のポイントを考察した。
第6章 EVとPHV、2017(実績)~2030の予測
ZEV=EVとPHVの実績は100万台/年のオーダに達しているが、IEAのGlobalEVstockが環境改善の有効性を予測している台数とは桁違いの乖離ある。ZEVあるいはNEV(中国)の目的は地域の大気環境の改善にある。EVは手段であって目的では無いが、それが逆転して捉えられ、メーカー間あるいは国家間の競争になっている。日本の自動車メーカーは、EVとPHVでも着実な実績を背景に、技術的なポテンシャルを活かすチャンスを狙っている。トヨタ自動車の動向が鍵であり、この間の情報も整理して紹介した。
第7章 EV、PHVとエネルギー諸問題の整合性
ガソリン車の石油エネルギー体系から、EVの発電電力への移行は、環境問題の改善への期待があるが、一方で、道路インフラまで含む合理性と経済性との整合性が課題である。地球温暖化とCO2抑制が、タテマエとホンネで先が見えないことと軌を一にするとも見える。この矛盾をEVの機電(メカトロ)システムで、クリアすること、我が国の得意とする技術分野であり、その一端を紹介した。
二次電池そのもののパラダイムシフトも、特に日本が先導する全固体電池の可能性で期待されているので、その概要を紹介した。
第8章 電池と原材料、部材の算定基礎~2017
EVの需要拡大を背景に原材料の試算と市場規模の基礎データを扱った。原材料のセパレータ、集電箔と電解液・質の比率とコストは重要であり、EV台数と電池GWhとの対応でこれらの所要量を試算した。その中で現在の液系電解液電池の限界も伺える。各材料の機能は残しながら余分な体積や重量は極力削除したい。
第9章 ZEV(米国)、NEV(中国)、CO2(欧州)、CO2(日本)とCAFE
EV化の当面の目標はZEVなど規制への対応であり、これら概要を一覧する。
第10章 EVの東西・南北とパラダイムシフト、液電解質系から全固体電池へ